民法・不動産登記法改正(相続登記の義務化等)について③

2021年06月01日

  皆さん、こんにちは。

 更新がかなり遅くなりました。年度替わりということもあり色々とバタバタとしておりました。

 
 さて、前回からの続きですが、本日は「不動産所有権の放棄」についてご案内します。
 
 法制審議会民法・不動産登記法部会では、相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みの一つとして、土地所有権の放棄の是非について検討されてきました。
 これにつき、土地の管理コストを誰が負担するのか、土地管理コストが放棄をした土地所有者から国民へと転嫁されること、安易に放棄を認めると所有者が将来の放棄を見越して土地を適切に管理しなくなるモラルハザードを生じさせることが懸念されていました。
 様々な議論を経て、新設された制度としては、一定の要件を満たせば土地所有者の申請を受けて、国が土地所有権の国庫帰属を認めるという観点から構想されました。
 
 以下、制度の概要を見て行くとこととします。
 相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権の全部又は一部を取得した者は、法務大臣に対しその土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる。
 土地が数人の共有に属する場合においては、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合において、相続等以外の原因により当該土地の共有持分の全部を取得した共有者は、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して行うときに限り承認申請をすることができる。
 承認申請者は承認申請に対する審査に要する実費の額を考慮して政令で定める額の手数料を収めなければならない。
 法務大臣は、承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国家への帰属についての承認をしなければならない。
 ⅰ建物の存する土地
 ⅱ担保権または使用収益を目的とする権利が設定されている土地
 ⅲ通路その他の他人による使用が予定されている土地として政令で定めるものが含まれる土地
 ⅳ土壌汚染対策法2条1項に規定する特定有害物質(法務省で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
 ⅴ境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
 ⅵ崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
 ⅶ土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
 ⅷ除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
 ⅸ隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
 ⅹⅰからⅸまでに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするにあたり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
 法務大臣の承認は土地の一筆ごとにする。
 承認申請者は承認があったときは、承認にかかる土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を勘案して政令で定めるところにより算出した負担金を納付しなければならない。
 負担金を納付した時は、その納付の時において、承認に係る土地の所有権のが国庫に帰属する。
 
 長々とご説明致しましたがご理解いただけましたでしょうか?
 この制度には公共的観点から見て社会的便益のある土地については、その管理コストが所有者にとって過大にならないのであれば、管理コストの国民負担を正当化することができる、との理解があらわれていますね。
 私のこれまでの経験上、この地域では特にこのような制度の需要がかなり見込まれるのではないかと思われます。施行日が決まり次第改めてご連絡いたしますので興味のある方は引き続きご注目ください。
 
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